ある夏の蒸し暑い熱帯夜の出来事でした。
京都駅の近くでおばあさんを1名お乗せして、行き先は朽木村。
暗い夜道ですからすこしでも明るくと、色々と世間話をしながら車を進めました。
聞くとおばあさん、村に帰るのは1年ぶりとのこと。
朽木村への長い山道を1台ぽつりと走るタクシー。
間を持て余して、ふと後ろを振り返ってみると、
おばあさんの足元には草履がきちんと揃えて置いてありました。
しかし、そこにあるはずの足が、ないのです。
ぞぉ~っと背筋が凍りつくのを堪えながら、もう一度後ろに目をやりました。
やっぱり足はありません。
明かりといえば、この車のヘッドライトだけ…。
考えてみると、1年ぶりに帰るというのに、
こんな真夜中にお年寄りがたった一人きりで帰るなんて…。
そういえば、今日はお盆の13日…。
私は叫びたくなる気持ちを抑えて、必死でハンドルを握りしめました。
やがて村に入り、おばあさんの指示どおり、右に左に曲がり、小さな民家の前に車を停めました。
私は怖くて、後ろが見れません。
後ろを見たら、“ただ濡れたシートだけが…”なんて想像したところでおばあちゃんの声、
「いくらかいね、料金は?」
おばあさん財布からお金を取り出そうとされてます。
冷や汗をかき、震える手でお金をいただくと…
…次の瞬間!!
…揃えた草履に向かって2本の足がにゅーっと出てきたのです。
…おばあさんはシートの上で正座しているだけだったのでした…。
おしまい。
【笑える話】足が…ない!,