心をくだくと、心が動く

【泣ける話】漁火を見せて

京都エムケイ 1984年入社

 

今から7~8年前のこと。営業所から出庫したところでGPSが入りました。お供先は桂病院とのこと。

お迎えにあがると70歳前後のご婦人が乗車になりました。

MKの挨拶を行い、お供先の再確認のため、「お供先は桂病院でよろしいでしょうか?」とお尋ねしますと、

少し間をおいて、淋しげに

 

「運転手さん。どこか海の見えるところに連れてってほしい。漁火が見たい。」 と言われました。

 

私が、「海でしたら、大阪湾か伊勢湾、又は日本海ですが、漁火が見えるかどうかは…」とお答えすると、

「それじゃあ、日本海に行ってください。」

私たちは舞鶴方向へ車を向けました。

道中、お客様はあまり喋ることもなく、どこか思いつめた様子でした。

しばらくしてお客様はこう言われました。

 

「運転手さん。実は先日主人を亡くしましてね。しばらく家にこもっていたのですが、

無性に漁火が見たくなりましてね。

急に思い立ってお願いしました。ごめんなさいね…。」

 

私は、「亡くなったご主人と旅行に行かれた際に、どこかで一緒に漁火を見られたのだろうか。」と思いましたが、

それ以上詳しいことは聞かず、世間話をしながらお供しました。

 

 

2時間半後、無事舞鶴に到着。

お客様に「漁火の見える場所を探しましょうか?」とお尋ねしたのですが、

昔の思い出に浸っておられたのか、お客様はふと現実に帰ったように、

「漁火ってなかなか見られないですよね。海の見えるところに行ってください。」と言われ、

私は舞鶴港の岸壁に車をつけることにしました。

港の岸壁でお客様は、しばらく潮風にあたっておられました。

 

そしてしばらくして時間を気にされたのか、車にお戻りになりました。

「家に戻ってください。」

 

帰りの車内、息子さんから電話が掛かってきたようで、

「気ばらしに町に出てるから、心配しないで。」とお答えになっていました。

その後、無事ご自宅にお送りしましたが、降車時に何度も「ありがとうございました。」と言ってくださいました。

 

私は、愛するご主人に先立たれ、淋しさのなか、

昔の思い出を偲ぶために遠い海まで行かれたご婦人の気持ちに心を打たれました。

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